目的地を設けず、ただウロウロと近隣を歩きまわるのが好きだ。
私はこれを散歩と呼ぶものだと思っていたのだが、どうやら、これに健康増進の目的が加わるとウォーキングという風に呼び名が変わるらしい。
同じルートを同じ速度で歩いても、目的によって呼び名が変わるのは大変に面白い。
「広報活動の一貫です」と言い放っておけば、勤務時間中にTwitterで呟きまくっていても許されるのと似ている気がする。
私が散歩のコースに選ぶルートは、住んでいる場所柄、人里離れた山中になる場合が多い。
平日の真っ昼間に人と出会うことはまずない。
時に、散歩だかウォーキングだか区別の付かないお年寄りに遭遇することもあるが、フラフラと無表情で歩いている様を見ると、この山の中をサンダル履きとは、もしや徘徊では?と心配することも度々である。
近い将来、「ただいま散歩中」と書かれた蛍光色のベストが発売される日も近いかもしれない。
さて、先日もいつもようにウロウロと散歩をしている最中、路傍に佇むお地蔵さんにホットレモンがお供えされているのを発見した。
ほっとレモンではなく、ホットレモンである。(別にどちらでもよいのだが)
ホットレモンとは、名前の通りホットで「ほっ!と」する飲むものである。
「吹きすさぶ寒風の中さぞかし寒かろう、どうぞこれを飲んでホットで「ほっ!と」して下され」
という声の聞こえてきそうな、大変に心遣いの感じられるお供物であった。
仮に、お地蔵さんがホットレモンを嫌いであっても、その心遣いに感謝するはずである。
今日、ブログを見ていると以下のような記事が目に止まった。
● 嬉しくないプレゼントをもらった経験アリは78% - ソニーマーケティング調査
http://news.mynavi.jp/news/2013/12/11/253/
「今までもらったプレゼントで、正直、嬉しくなかったプレゼントがありますか」と質問を行った。これに対しては、78%が「ある」と回答(【図1】参照)。女性に限れば、85%もの回答者が「ある」としている。
確かに、どうせ貰うなら、欲しくもない物よりは、欲しいものがよいという気持ちは理解できる。
しかし、相手の欲しがっていたものが何なのかわからなかったり、たとえ欲しいものを知っていても高額すぎたり、あるいは、うなるほどお金は持っていても品薄でどうにも入手が難しいケースなど、皆いろいろな事情があるのだ。
プレゼント=単に「お金を払わずして欲しいものが手に入る」ということではないのである。
心を込め相手が喜ぶようにと考えに考えた末の贈り物が、相手にとって「嬉しくないプレゼント」であった場合、果たしてこれは贈り主の落ち度なのろうか。
プレゼントの品=相手の欲しいものである場合、リサーチ不足という点で贈り主の落ち度と言えなくもないが、相手の欲しがっているものだけが相手の喜ぶブレゼントではないはずである。
昨日、母殿より荷物が届いた。
開けてみると中はカステラであった。
断っておくが、私が幼少より無類のカステラ好きという事実はない。
きっと、旅行先かなにかでこのカステラを見つけ、「大変に美味しいので食べさせてあげよう」と言う親心で送ってくれたのだと思う。
あるいは、本屋さんで偶然にも「ぐりとぐら」の絵本を見つけ、「そういえばこの中に出てくるカステラが食べたいって子供の頃言ってたわねぇ」という記憶がフラッシュバックしたのかもしれない。
などと、実際は、「お歳暮でたくさん頂いて食べきれないから」という理由で贈られたものであっても、贈られる側の流儀一つで、受け止め方はどのようにでも変えることができるのである。
「なぜその品を選んだのか」を考えるだけで、嬉しくないプレゼントも嬉しいプレゼントに変えることが十分出来るのである。
O.ヘンリー「賢者の贈り物」
http://www.hyuki.com/trans/magi.html
誰もが一度は読んだことがあるO.ヘンリーの「賢者の贈り物」という短編小説である。
口癖のようにマイホームが欲しいと言っている奥様や、本物の新幹線が欲しいといって聞かない鉄オタの4歳児など、相手の欲しいものがわかっていながらも、諸事情で調達することが出来ない場合、この本をプレゼントと一緒に同梱してあげることをお勧めする。
相手の事を考えながら選んだ商品の裏側に、費やされた時間や苦労を+aしてくれることであろう。
ただし、この本自体を「嬉しくないプレゼント」に仕分けされてしまう可能性もはらんでいるので十分注意が必要ではあるが。
皆様の成功をお祈り申し上げます。
賢者の贈り物
クリスマスのプレゼントを買うために、自分のいちばん大切な宝物を手放してしまう夫婦の絵物語。
オー ヘンリー (著), 和田 誠 (イラスト), O. Henry (原著), 千葉 茂樹 (翻訳)
ホットレモン
「ほっとレモン」だの「ホットレモン」だの「まるごとレモン」だの、類似品が多数ある。お供えをした方は、小岩井のホットレモンをチョイスしたようだ。
ぐりとぐら
1963年に「こどものとも」誌上で発表されて以来、日本だけでなく世界各国で愛され続けるふたごの野ネズミ「ぐり」と「ぐら」のお話。
作者の中川李枝子さんは、『となりのトトロ』のオープニングテーマ『さんぽ』の作詞者としても有名。




